お試し移住・田舎暮らし体験に参加して感じたこと:農業体験編【移住先:鹿児島県曽於市】
おためし移住・田舎暮らし6泊7日プチ旅行
(第2話:11月24日~11月26日)
平成28年11月24日(木曜日)3日目
いよいよ、3日間の農作業体験が始まりました。
本日の予定大根収穫が明日に急遽変更になり、徳一農園さんにサツマイモの収穫に行くことになりました。
徳一農園さんのサツマイモはあの有名なお酒、「霧島」に使用されているものなのだとか。
寒空の中現地に到着すると、お世話になる徳丸さんご家族が温かい笑顔で待っていて下さいました。参加者全員分の新作☆農作業用のユニフォームまで準備して頂いていて、小洒落た赤か青の選べるチェック柄。
どことなく今時な作業服を手に取りながら農家さんの心意気に感謝しつつ、おもむろにその場で着替える参加者の面々。その表情はほころびます。
長靴に履き替えて一同が着替え終わったところで、「まずは手作業でサツマイモを収穫してみましょうか?」と徳丸さん。
お手本を見せて頂いてから、苗が顔を出している中心部の周囲を軽く円を描くようにして掘っていきます。土の厚みを感じながら皆で位置について掘り進めると、見慣れた紫色の皮をしたサツマイモではなく、一見ジャガイモのような白っぽい皮をしたサツマイモが顔を出してくれます。
熊本出身の参加者が一言。「美味しそう…♪」
これから丸一日夕方までこのサツマイモと格闘することになろうとは、この時誰一人として想像していなかったであろう。
1人2、3本掘ったところで、機械作業へ。
大きなブルドーザーのような機械に皆で登り、下から掘り起こされて目の前の台上に流れてくるサツマイモを蔓と切り離し傷物がないか、大きさも丁度良いかどうかを確認しながら手作業で一つずつ後ろの袋の中へ入れていきます。
通常は2人でこの作業をして、一日で大人が6名程入ってしまいそうなサツマイモの詰まった袋が幾つも畑一面に並ぶのだと伺いましたが、この日は参加者含めた4名で一生懸命作業をして出来上がったのが3袋程。
農家さんの親切心と参加者全員たっての希望により、機械のスピードも午前中はゆっくりして頂きながら進めていきました。
それでも
「追いつかない~」
「早い!機械を止めてください!あ、いない!」
「お兄さん何処へ行ったんだ~!!」
「あ!いました!徳丸さん!サツマイモが(仕分けきれずに台上に)詰まりそうです!」等と口々に叫んだり、無言で作業に没頭したり、楽しみながらも皆真剣に目の前のサツマイモと向き合いながら慌ただしく時間が過ぎていきました。
ふと、「ここでティータイムにしましょうか」とのお声が掛りました。
畑の端っこに停めてあった白い軽トラックから、徳丸さんご一家がサツマイモを黄色く四角い、固いプラスチック製のボックスを何やら畑に降ろしていきます。
見る間に即席テーブルとイスが目の前に広がり、奥さんがお茶や紙コップ、お菓子を並べて、色んな種類の朝から焼いて下さった焼き芋や、「ご近所から頂いたのよ♪」と「カライモ餅」というサツマイモをお餅に練った物も紙皿に取って分けて下さいました。その両サイドで微笑む徳丸家の大黒柱であるご主人とご子息。
今まで食べたことが無かったのですが、サツマイモのほんのり甘くて優しい味がして美味しかったです。青空の下、見渡す限り広がる畑の中で「寒いね~」「美味しいね」と皆で話しながら、農家さんの温かな人柄に触れ合いながらのティータイムは至福なひとときでした。
皆で片付けをして再び作業に入ります。
ティータイムの威力か、段々慣れてきた一同はお昼休みまで黙々と作業を続けていきました。
お昼は皆で移動をして、財部駅近くの定食屋さんへ。
温かいおそばを皆で頂きました。
作業服と長靴のままでお店に入れるこの感じ、田舎ならでは?
トイレの窓が全開だったのには驚きましたが、これもここならではかもしれないという話題も上がりました。
この辺りの方は皆さん、あまり家のドアや窓に鍵をかけるという習慣がないそう。
警戒する必要性がない程、信頼関係が厚いのだろうか。
実際に「最近、イモが盗まれた」「機械が一台無くなっていた」なんて話を聞いてしまうと心配になってしまうけれど、そんなことでピリピリする程、曽於市の方達は心が狭くない様子が会話していた時の雰囲気からも伝わってきて妙に安心してしまいました。
参加者の一人は「鍵、閉めましょう?」とこの体験期間中に何度か諭していましたが、そのやりとりすら微笑ましく感じられる程、ゆったりした人柄を感じさせられる方が多い。
午後からも畑へ戻って、サツマイモを収穫していきます。
機械のゆっくりだったスピードも少し早めて頂いたりしました。
自分達で仕分けたサツマイモが沢山詰まった袋が畑に横たわり美しい夕日が差すのを見ると、何とも言えない達成感に包まれました。
お土産で沢山のサツマイモ(シルクスイート)まで頂いて、皆で感謝して持ち帰りました。
平成28年11月25日(金曜日)4日目
25、26日の2日間は山豊農園、豊田さんご家族にお世話になりました。
この日は朝から大根の収穫をさせて頂きました。
山豊農園さんの大根は、セブンイレブンのおでんにも使用されていたり、漬物にもなったりと変化自在。
収穫するまでの成長過程等も丁寧に写真やプリントを準備していて下さり、それらを用いて初めに豊田さんご子息からの丁寧な説明がありました。
やはり共通して豊田さんご家族も皆さん温かい笑顔で迎えて下さったのが印象的。
大根も初めは手作業で収穫体験をさせて頂いたのですが、サツマイモと大きく違ったのがしゃがんで前屈みになって掘り起こすのではなく、スクワットのように足腰を使って引き抜く時の感覚でした。
1人4、5本程手作業で収穫させて頂いた後に豊田さん指導の下、豊田家ご主人が余裕の表情で動かされている機械で抜かれた大根が列になって横たわり並んでいるのを、包丁を使って根っこと葉っぱが生えている頭の部分を皆で切り取る作業に入りました。
昨日とは打って変わってぽかぽかと日差しの暖かい天気にも恵まれた為、立ったり座ったりの作業で完全防備だった参加者全員の体温は上昇。途中で着替えても汗を掻きっぱなしでした。
けれど、とても気持ちの良い汗。空気も美味しい♪
お昼前には山豊農園さんでもティータイムがあり、こちらはレジャーシートと仕分けた後の大根を入れる袋がまとめてあったものをイスの替わりに使用されていました。
そして、赤いプラスチック製のボックスがテーブルに。
ある物で、よく考えられているなぁと感心。
休憩時、畑の隅っこにみかんの皮を発見。
参加者皆で不思議に思っていると、この日出して頂いたバナナの皮をどこに捨てるのか聞いたときにその経緯が発覚。「自然に還してあげるのよ♪」と奥さん。
ご主人やご子息も、ほぼ同時に頷かれていました。
既にご主人の横にはバナナの皮が捨てられている、いや畑に還されているではないか。
お菓子やパン等も頂きつつ青空の元、皆で爽やかなティータイムを終えて、再び作業へ。
楽しくも体力を心地よく消耗している感覚があり、作業をしていると大根の青々とした葉っぱや根っこを包丁でサクッサクッと澄んだ空気を吸いながら切っていくのが段々と爽快に変化していき、気が付くと一列、また一列と皆と一緒にあっという間に時間が過ぎていきました。
お昼休みは財部駅にある桂庵というお店へ。
田舎暮らし体験プログラムに参加してから、至る所で噂に伺っていた大盛りで有名なお店。
実際にお店では料理が運ばれてきてからそれを実感しました。
「あそこのから揚げは10個くらいついてくるよ~」「タッパー皆持参していくんだよ」等、色んな方から伺っていた通り、ボリューム満点。
マグロ丼を注文するとお蕎麦もついてきて、マグロにも照り焼きチキンのような醤油のソースが絡めてあり、満腹になりました。鹿児島の醤油は甘かったです。
午後からは午前中作業の続きをしながら、綺麗に仕分けた大根をまとめて赤いネットの袋に10本ずつ詰めていきます。
傷物や形がいびつな大根は15本ずつだそうですが、素人には判別が難しいので豊田さんご家族にお任せして教えて頂いた作業を頑張ります。
ティータイムも再び、参加者皆で休憩していると小さな蜘蛛が畑にふわふわと飛び交っていたり、蟻の巣が足元に見えたりと自然と一緒の和む時間。
畑の真ん中にスピーカー式のラジオがぽつんと置いてあり、作業中はずっとラジオ番組から様々な音楽が流れていました。畑に夕日が差し込み、この日収穫した大根の本数、約2千本以上。
「給料はあげられんけども(笑)大根持って帰り♪」と、お土産に大根のお漬物、業務用の大きいパックを頂きました。笑顔が眩しい。
学校の送迎で使用されている車のトランクに前日のサツマイモが載せられていて、そこにお漬物も加わりました。
平成28年11月26日(土曜日)5日目
3日間の農作業体験の最終日。
自然薯を収穫しに、学校から車で程近い山豊農園さんの畑へ移動します。
連日の疲れが溜まってきたのか少し体調不良になってしまいましたが、スタッフさんの機転によって出発時間を1時間程遅らせて頂いたお陰で、ご迷惑をお掛けしてしまったけれど活力を養ってからの出発となりました。
作業にちゃんとついていけるのだろうかという不安もありましたが、この日掘り起こす自然薯は土に埋まっているパイプの中で成長していき、収穫時はそのパイプごと掘り起こすという形のもので、身体の状態が万全でなくとも楽しみながら掘り起こすことが出来ました。
苗を植えたところから蔓が下に伸び、それを頼りに自然薯の入ったパイプの隅を手で掘って探し当て、隅から隅までパイプを傷付けないようにしながらスコップで土を剥がしてパイプを出しやすいようにしていきます。
そこまで出来たら後は手で、パイプの両サイドを持ち上げて中の自然薯をパイプから取り出して軽く土を払う、という行程。
あまり力を入れずとも掘り起こせたのは、豊田さんいわく「女性でも簡単に掘り起こせるっちゅうタイトルのパイプを買ったから」なのだそうです。
「そんな種類の農作業用のパイプがあるんだ」「農業女子向け?」「自分達でも自然薯育てられるかもしれん」とわくわくする一同。
畑の隅っこの方は掘り起こした自然薯が虫に喰われていたりして肩を落とすこともありましたが、一本一本掘り起こしてからでないと状態が分からない事もあって、良い状態の自然薯が掘り起こされるとまたとても嬉しく、皆で一喜一憂しながら作業を進めていきました。
途中、畑で参加者のみで作業をさせて頂いている時間があったのですが、道路脇で目立つ位置に畑があった為かチェック柄の普段見かけないユニフォームに身を包んだ一同が一生懸命、土を掘っている姿を色んな方が凝視していかれました。
「まさか、泥棒だと思われているんじゃ?」ある意味、手に汗握りながらの自然薯堀り。
見慣れない人がいるだけで、周りが敏感に反応する。
地域の方達の繋がりがいかに密接なのかが、読み取れる瞬間でした。
たからべ森の学校、農業人材育成科の卒業生の方達もお手伝いに来ては楽しくお喋りして帰っていきました。彼らの中には許可を得て、土が付いたままの自然薯をかじって状態を確かめる強者も。この2日間お世話になっている豊田さんも、実はたからべ森の学校の第1期卒業生なのだそうです。
お昼ご飯は道の駅、すえよしまで皆で移動して頂きました。
お腹いっぱいになって和んだところで、午後も残ったまだ掘り起こしていなかった自然薯を掘り起こしに畑へ戻ります。
その後、バケツリレーで収穫した自然薯を豊田さんの軽トラックまで運び、学校まで自然薯を持ち帰るまでをゆっくり行いました。自分たちの背丈よりも長いものもあり、1本5千円以上すると伺っていたので運ぶ際は気が引き締まりました。
学校へ戻ると、またも素敵なティータイムが。
12月10日から始まる予定の森の学校カフェにてケーキと紅茶、またはコーヒーを頂きました。
元は学校の教室だったところを使用されている為、雰囲気も趣もあってお洒落。
現在☆金、土曜日の11時~16時まで絶賛OPEN中
参加者皆で写真撮影大会になってしまいました。
一息つくと校舎の外にブルーシートを敷いて、自然薯を出荷出来る形にする為に土や細かい根を抜いたり剥がす作業をしました。
座って世間話をしながらの細やかな作業では、参加者それぞれの性格が出てきて面白かったです。
最後に豊田さんが今日採ったばかりの自然薯を試食させて下さる事になり、すり鉢で丁寧にすりおろした真っ白な自然薯を皆で醤油を少しだけかけて食べました。
「ご飯が欲しい!」と皆で顔を合わせてぺろりと完食、とても美味しかったです。
こうして3日間の農作業体験は幕を閉じました。
3日間ともそれぞれに、その日たった一日しか農作業に携わる機会がなかったけれど、農家さんは日々、四季を感じとりながら良い時も悪い時もこうしてお仕事されているんだなぁと本当に一部ではあるけれど垣間見ることが出来て、実際に体験することが叶い嬉しかったです。
たからべ森の学校のスタッフさんや周囲の多くの方達のお力添えがあったことも感じながら、農作業の右も左も分からない自分達に農家さんがそれを快く引き受けてくださったのだなと思うと感謝でした。
つづく